バントー山麓


 例えば野原に建築途中の捨て置かれた納屋がある。或いは電気も水道も通っていない納屋でバカンスを過ごすベルギー人がいる。『プロバンスの12ヶ月』で有名なリュベロンは洗練された田園と手入れの行き届いた家屋が続いているけれど、ここバントー山の麓は綻びがあちこちに見受けられる古いタピスリーのような素朴な田園風景が続いている。夜明け前にそんな田舎を散歩する。東京のビルの狭間の明け方のような乾いた孤独さが漂っている。