マクマホン大通り


 凱旋門へのなだらかな坂道をゆっくりと登っている。バカンスの季節が始まったせいか、人通りが心なし少ない。まるで田舎の道を麦わら帽子をかぶって散歩しているみたいだ。とすると、斜め前を歩いているのはガールフレンドか?白いシャツと白い半ズボンが木洩れ日にキラキラと光っている。自転車に乗ったおかみさんと軽く会釈を交わす。いくら歩いても、目的地には少しも近付かない。建築物の屋根と白い雲の浮かぶ青空は不釣り合いな合成写真のようだ。車の騒音は遠のき、風が木々の葉っぱを揺らせながら通り過ぎる音が聞こえる。斜め後ろから見る怒ったような彼女の横顔が風景に溶け出す。汗が一滴、額を流れる。

今日引っ越す。パリの夢ともしばらくお別れ。