バイヤール通り


「バイヤール通り」には「バイヤール書店」がある。1870年創業の老舗なんだけど、最初は"Bonne Press"という書店名だったらしい。戦後のある時期に書店のあった通りの名前に変えた。"Bayard Press"。安易な命名だな。イニシャルはいずれBPだから書店のロゴは変えなかった。第二帝政期にオスマンの挙行したパリ大改革時に建てられたらしい建築物が、その通り沿いに軒を連ねている。その短い通りを10メートルほど北に進むと「フランソワ一世広場」という閑静なロンポワンがある。広場に面した一角にその屋敷はあった。屋敷を囲む塀には蔦が絡まっている。その密集した蔦の間から僅かに建物のファサードが覗き込める。南向きの三階からはセーヌ右岸の並木が見渡せるに違いない。シャンゼリゼからほんの数百メートル入っただけなのに、その辺りは静けさが舞降りてきそうな閑静な空間を形成している。こんな威厳に包まれた屋敷に住むというのはどういうことなんだろう、と考える。あなたは誰ですか?