霧の運河


 十月後半だというのに日中は汗ばむ陽気だ。それで風邪を引いた。朝起きると珍しく運河は霧で覆われていた。起きる前に怖い夢を見た。夢は外套を二枚重ねに着込んで通りを過ぎていった。付いて来るなといわれても、俺には他にあてなどないのだよ。必死に追いかけていったのだけれど、まるで流れるように走り去る怖い夢は忽然と姿を消した。運河は霧で覆われていた。その運河沿いをとぼとぼと歩いて帰った。でも、どこに?