コンフラン


  今日久しぶりにボブ・デュランの「北国の少女」(*1)を聴いていて、五年ほど前の冬の旅を思い出した。「夢も凍りそうな寒い日に」(*2)上野駅から上越新幹線に乗った。長い日本出張中、日程の都合でぽっかり一日空きができた。疲れているのに時差で眠れない。疲れているから何もする気が起きない。それで、夜明けと同時に上野駅まで行ってみた。当ては無い。そんなことはほんとうに久しぶりだ。昔は当ても無くいろいろな手段で旅をした。レンタカー、列車、単車、ヒッチハイク。当ても無くいろんな場所を徘徊した。北海道、九州、信州、関西。今はもう当ても無く旅することなんてない。それで、地下鉄を乗り継いで上野駅まで行ってみた。駅前の喫茶店で珈琲を飲む。煙草を吸いたかったけれど、もう五年前から止めている。ところで、俺はどこかに行くのだろうか?口から吐き出す白い息で両手を暖めながら、発着大掲示板を仰ぎ見る。新潟。不思議な響きだ。行ったことはない。昔知ってる人がいた。そうだ、新潟に行ってみようと思い立つ。一旦思い立つと、ずっと前からそう決めていたような気さえしてきた。

 トンネルを越えるとそこは越後湯沢で、本当に雪国だった。山も雪、平野も雪、海辺も雪だった。しんしんと降る雪の中を列車が走る。それから、新潟郊外の小さな町をぶらぶらと歩いて、夕方東京に戻った。それだけ。

 今日の東京は大雪だったようだ。最後にパリに雪が積もったのはいつだったんだろう?

(追記)それにしても、「ソバカスのある少女」(*3)は「北国の少女」に触発されたんだろうな。

(*1)http://www.bobdylan.com/songs/girlnorth.html
(*2)『夢の兵士』の一節。安部公房
(*3)http://www.uta-net.com/user/phplib/view_2.php?ID=60058