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 もう四月中旬だというのに、昨晩はフランス北部に大雪が降った。大雪といってもせいぜい二十センチ程度ではあるけれど、この季節には異例のことだ。

 雪が降ると、古い友人から久しぶりの便りを受け取った時のように少しわくわくする。急ぎの仕事なんかを終らせ息を整え、ワイングラスを片手にゆっくり読みたい、そんな気持ちになる。でも都会に降った雪は、そんな余裕もないままに塵芥にまみれて昼前には解けてしまう。夏時間で陽の長くなった夕刻、高速道路を避けて少しぬかるみになった田舎道を車で帰途に着く。家に帰り着くと、本当に古い友人から短い便りが届いていた。季節はずれの雪と古い友人からの久しぶりの嬉しい便り。もうすぐ春だ。