エッフェル塔


 見終わっても数日間、折に触れて反芻する、稀にそんな映画がある。一昨日CANAL+でたまたま見た"Je vais bien, ne t'en fait pas"もそんな映画の一つだった。『心配するな、俺は大丈夫だから』とでも訳すのだろうか?でも、それじゃ映画の題名にはならないな。

 バカンスから帰ってきた19才のリリは、最愛の双子の弟が家出したことを知らされる。美しく脆弱な彼女には、弟の無言の家出が耐えられない。やがて彼から一枚の葉書が届く。彼女の弟探しが始まる。音楽がまたいい。ゆっくりと流れる時間とNicola Piovaniの音楽が調和して、叙情溢れる映像を見ていると「ああ、そうだ。こんな感じだった」となにかを思い出させてくれる。この人はイタリア人のピアニスト・作曲家で、映画音楽を多く手がけているらしく、Roberto Benigniの"La vie est belle"の音楽もやっていた。AaronというグループのU-turn(Lili)という歌もよかった。

 邦題がどうなるのかは分らないけれど、機会があったら見て損のないB級映画だと思う。原作Olivier Adam、監督Philippe Lioret、主演女優Melanie Laurent。危うくはかない美を湛えたこの女優を見ているだけでもいい。「昔、俺にもこんな恋人がいたんだよなあ」という幻想を与えてくれるかもしれない(笑)。