ビレーヌ・シュール・セーヌ


 久しぶりのゼネストだった。95年のジュッペ政権を崩壊に追い込んだ規模と同じくらいの広範なストライキだったらしいが、今日は小春日和の穏やかな一日だった。目的は「一部の公務員年金特別制度の改変」に対する既得権確保だけれど、組合としても特別制度撤廃は時代の趨勢として許容せざるを得ないのだから、条件闘争を優位に持ち込むための力の誇示という範囲を出ない、迫力に欠けたゼネストだった。政府を追い込み首相を退陣に追い込むほどのかつての気迫は今はない。35時間制で休みの増えた会社員は、丁度いい機会だとばかりにこぞって休みを取り、バスの通らないパリの市内は、普通より渋滞が緩和されたくらいで、のんびりとしていた。

 そういえば昔日本でも、春にはゼネストが行われていた。春闘という名の風物詩だった。品川駅周辺だけは、インターナショナルという趣味の悪い合唱が響き赤い旗が翻っていたけれど、ほとんどの年若いプロレタリアートは、やることもなく狭く暑苦しいアパートの布団の中で、日がな一日恋人と乳繰り合っていた、、、、らしい。多くは凡庸な年金生活を送っているであろう彼らは、今のフランスゼネストのニュースにノスタルジーなんかを感じるのかなあ?